妄想のオムライス
とんだ誤算だった。
自分のここまでの人生は人並み以上のモノだったという自負はある。商社マンの父親と、授業参観では他の生徒がうらやむ綺麗な母親。裕福な家庭で育ち、夏休み恒例のワイキキの別荘への旅行のおかげで、ハワイの土地勘は日本以上にあるかもしれない。
私立学校から有名大学を出て、大手広告代理店に入社してからも仕事は順調で、若手クリエイターとして着実に社内での実績もついてきていた。プライベートでも合コンでは端正な顔立ちと軽妙なトークで、したくないお持ち帰りをするほど暇なしにモテていた。
勝ち組だ。人前では勿論そのような事は言わないが、心の中ではそう思っていた。当然努力だってしてきたが、それ以上に恵まれた家庭環境や容姿に依る所は大きいと思っている。だからこれからの自分のキャリアを信じて疑わなかったし、きっと周りもそう俺の事を見ていたと思う。
今、自分は刑務所の中でこの手記を書いている。
どこで道を外してしまったのかは分からないが、転機となったのは3年前の会社独立でである事は間違いない。順風満帆な俺は更なるステップアップとして、自分の会社の設立という選択をした。人脈も出来ていたし当然勝算はあった。
しかし、独立した直後の翌月に不測の事態が起こった。記憶に新しい新型ウイルスが全世界に蔓延したのだ。それまでの世の中の普通が当たり前でなくなり、経済も大きく落ち込む事となったこの出来事は、俺の人生も大きく変える事となった。
まだ取引先も安定していない状態だったため、経済が不安定な状況で新会社に依頼する企業は現れず、全く仕事がない期間が続いた。元の会社のツテを使って顧客を紹介して貰おうと相談もしたが、周りも余裕がないのかそこまで親身になってくれる人間はいなかった。
払える給料がないので社員も離れていき会社といいながら一人になり、それでもこれまでのプライドが邪魔をして周りや家族に助けを求める事は出来なかった。そこからは何とか生きるために必死だったので正直悪い事をしたという記憶もないが、結果、詐欺罪で捕まり5年の懲役という判決が下った。
これまでの人間関係はほぼリセットされたし、ここからの人生はビハインドからのスタートになる。捕まった当時は無気力だったが、今ではだいぶ冷静に自分を見つめなおす事が出来るようになってきた。最近ではちゃんと腹も減る。
刑務所から出たら一番に何が食べたいか。色々考える。ラーメン、カレー、うどん・・
。でも今俺が頭に浮かんでいるのはオムライスだ。刑務所の薄味の料理からの反動のように、今はケチャップがたっぷりかかったオムライスをかきこみたい。ああ早く出所したい。
①オムライス
◆夏野菜チキンライス
・ししとう:4本(粗みじん切り)
・いんげん:4本(粗みじん切り)
・ミニトマト:4個(半月切り)
・ウインナー:4本(細切り)
・ホールトマト:1/3缶
・ケチャップ:適量
・塩コショウ:適量
・米:1.75合
・ニンニク:1片(みじん切り)
・唐辛子:2本
・オリーブオイル:適量
◆卵
・マヨネーズ:適量
・牛乳:適量
・卵:4個
・油:適量
・オリーブオイルでニンニクを炒めた後、他材料も炒め合わせてチキンライスを作る
・別のフライパンで油を熱して材料と混ぜ合わせた卵を炒めて好みの硬さにする
・チキンライスに卵を乗せて、ケチャップをかける